ぽっちゃり系のガールズバーが意外と良かった
名前:健一 年齢:27歳
俺は旅行代理店で働いている。旅行好きというのもこの職を選んだ理由だけど、仕事自体は最近飽き飽きとしてきた。勤続年数は6年で、5年を超えたあたりから日々に彩りがないなと感じることが多々。
恋愛は半年前に別れてから、一切する気にはなっていない。喧嘩が絶えない毎日だったので、しばらくは1人でいいかなといった感じだ。
ただ、半年も女っ気がないのはどうだかなと、つまらない日々に不満もある。職場の同僚や先輩は毎月コンパに行ったりキャバクラに行ったりしているが、実に楽しそうだ。
同じ部署で面倒見の良い先輩が居るが、彼もまた夜の店に出入りしていてストレス発散が実に上手い。そんな先輩からだが、たまたま残業で一緒になったとき「お前はキャバクラに行かないの?」と聞かれた。
「ブランド物のバッグとか貢がされそうで、ちょっと辟易しますね」と俺は言った。
しかし「偏見が強い、実際は貢ぎなんてなくて高い料金なしで遊べるぞ」と先輩は言う。続けて「お前にはキャバクラやラウンジよりも、ガールズバーが良いかも。まずは入門としてな」とのアドバイスがあった。
ガールズバーとは何なのか、色々と尋ねてみたところ激安価格で女の子との束の間を楽しめるらしい。さらに、好きな酒もリーズナブルに楽しめるようで、聞けば聞くほど関心が深まっていく。
なお、先輩はキャバクラ派であり、社内にはガールズバー好きの社員は皆無。さすがに1人で行くのは気が引けたため、友人を誘うことにした。正直、友人を誘うのにはためらいがあったが、理由もある。
誘った友人はスタイルが悪く、小太りなのだ。痩せれば良いのだが、本人にダイエットをする気はない。しかし、他の友人は所帯持ちで子育てがあり誘えないので、もはや苦渋の選択である。
とはいえ興味津々モードなので、ガールズバー探しには熱が入っていた。田舎なのにあるかなと検索していたが、面白そうなお店を見つけた。
なんと、ぽっちゃり体型の女性が多いガールズバーだ。太っているかというとそうでもなく、いわゆるデブではない。
コアな点を突いていることから、友人にも俺にもピッタリではないかと早速予定を立てる。
平日の水曜日、目的のガールズバーへ着き扉を開けると、思いのほか明るく非日常の空間が俺たちを包んだ。カウンターは約10席近くあったと記憶しているが、出勤の女性スタッフは3人いる。
俺たちはカウンター席に座り、90分の飲み放題コースを選んだ。驚いたのが、1時間半も滞在できるのに料金が3,000円台という低価格よ。あまりの安さにテンションがアップした。
しかも付いてくれた女の子たちは、やはりぽっちゃりはしているものの顔自体は可愛らしい。そして何よりも愛嬌が良く、初対面なのにすぐに打ち解けられたことも高ポイントである。
「お仕事いつもお疲れ様、今日はとことん飲みましょう」と声掛けがあり、さっそくビールを頼んだ。
旅行代理店の苦労話や、時代の情勢によって売上が乱高下することも話したが、ものすごく親身に愚痴を聞いてくれる。
いっぽうの友人も「こんなに愛想良く接してくれるなんて思わなかったよ」と女の子に言っていたが「ガールズバーを続けていたら、お客さんが癒されるのを見るのがもっと好きになって」と返していた。
良い空間だなあ、仕事の嫌なことも忘れられる、非日常のヒーリングスポットじゃないか?と俺はガールズバーを開拓した喜びに浸る。
また、これは女性スタッフには言っていないが、抜群にルックスが整っているキャバクラ・ラウンジだと、このように朗らかで天真爛漫な接客はなかったのかとも同時に感じた。
なぜなら、天は二物を与えずというからに違いないだろう。そして夢の話になり、俺は漠然としていて特にないのが悩みと俺についていたFさんに言った。
すると「私は将来、結婚して子育てしながらお花屋さんで働きたい!」とここでも満面の笑みで返してくれた。
彼女の姿を見ていたら、俺も明日から頑張りたいとパワーをもらった気がする。話も積もり1時間半の時間は、あっという間に経過した。
「また来てね!」と最後に言われたので「もちろん!絶対来るよ」と告げ店を後にする。友人も小太りの体型についてフォローがあったらしく、また行きたいと言っていた。月に1回くらいなら来てみようと思えたので、友人と約束を交わす俺。
そういえば、先輩がまずガールズバーへ行けと言っていたが、的確なコメントだったと人生の先輩の助言もありがたかったとひしひし感じた夜だった。